ピースストライカー #01

うごメモで制作中の漫画"ピースストライカー"の小説(元ネタ)を掲載。
注:漫画版ピースストライカーと序盤大きく話が異なりますが、正式な話はこちらの小説なのでご了承ください。
他人キャラの名前が変更されている部分がございますがご了承ください。

(実質2話分が変更・削除されています。)

ピースストライカー “Peace Striker”
#01 正反対の世界

遠い未来の世界。
そこには、相変わらず狭苦しそうに暮らしている人類と、「意志」をもった獣人「フィル」が共存する世界であった。
特に他国間の争いもなく、一見平和そうな世界であった。
ただし、その平和は、たった一つの声明によって崩れ去っていくのだった――

「え? 軽蔑調査?」
石川県金沢市のとある中学校の相談室で、女子生徒と二人のフィルが相談していた。
女子は赤のセーラー服に短髪の子。
フィルは毛並みのしっかりしたこげ茶色のキツネのようなフィル。灰色のジャケットにジーンズ姿。
もう片方は毛が黒と橙の猫フィル。灰色の都市迷彩を上下に着ている。
こげ茶色のフィルが語る。
「そう、軽蔑調査。最近フィルがなにかと差別などされてないかを調査するんだ」
「ふーん。私はフィルとでも親しくするよ―――ってなんで?」
「最近世間に反フィル主義を唱える人物がでて、それが一気に全世界に広まったからさ」
「・・・反フィル主義?」
「そ。世界の著名で律儀な暴力団の誰かがその反フィルを唱えたらしいんだ」
「・・・そんな人が・・・!?」
「ああ。高確率で、フィルとフィルの支持者を軽蔑する角度ができる。または虐殺だな」
「・・・・・・ということは・・・私も・・・」
「きみがフィル支持派だからこれがいえたんだ」
女子はひどく慌てふためいた。
フィルが厳かにいう。
「おれらフィルや共存主義(プロテスタント)は、いざ虐殺が始まったら反抗するつもりさ」
「フロスト、抵抗は司令官の指示だぞ」
「戦争になるなんて・・・」
女子は机の上で伏せた。
「赤城さん、俺らも戦争はしたくない。けどそうなるか否かは、社会次第なんだ」
「―――おっと、もうこんな時間か。レオン、行くぞ」
フロストが腕時計を見て言葉を発す。
レオンは席を立つと同時に、こういった。
「赤城さん、くれぐれも世間の動きに注意していてくれ」
「うん。・・・あの・・・玄関まで付き添うけど、いい?」
3人はすぐ相談室を出て、玄関に向かって歩き出したとき――――――
ボゴッ
後ろから黒ずくめの男たちが3人を殴りつけた。
「フィルに共存主義(プロテスタント)め」
一人が言い残した後、全員消えるかのごとく去って行った。


「・・・・ううっ・・・」
目を覚ますとそこは隔離病室だった。自分はブラジャーと男子用の紺色のパンツ以外裸であった。
「あれ・・・・レオンさんとフロストさんは・・・?―――いっ・・・!!」
すると近くにいた少年が振り向く。
「あっダメだよ急に動いちゃ!!」
背丈の小さく、後ろ髪の長い少年が駆け寄る。
「今は休んでて!」
「ど・・・どうも」
少年の圧迫感に赤城は従うしかなかった。そもそも、彼の言葉が正しい。
ベッドについた途端、赤城はあることを疑問に抱く。
―――そばにいる少年はいったい何者なのか―――。
それを聞くべく、少年に尋ねる。
「なんでそんなに髪が長いの?」
すると少年がギクッと苦笑い。
「いや、あの―――これは・・・その―――・・・」
いきなり切羽詰った発言に赤城は問い詰める。
「もしかして異星人?」
その途端、彼の顔から笑いが消え、焦りの表情。
「―――ったくモコはポーカーフェイス下手だな」
すると横からフロストが口をはさむ。彼は上を見上げたまま、
「俺が洗いざらい話すよ・・・事実を」
と重々しく言った。
「実はな、ここ最近、新しい物質が発見されたんだ・・・。とある採掘場でな。
その物質を見つけた本人は独自に研究をすすめた結果、未確認の原子を含んだ危険物質であることを明らかにした。
公に出すまいとして自分の保管庫へ入れて、厳重に保管してた・・・もちろんその採掘場も閉鎖させた・・・。
だが、何らかの方法でその原子が科学研究所に公表され、この原子のさらなる研究が始まった・・・。
すると半年後、この原子を用いた混合物の生成で、1〜110数個ものどの原子と組み合わせても、過剰な燃焼反応が起きたそうだ。原理は知らないが、石油以外全部だ。それを明らかにした刹那、この原子が機密情報として公には出さなかった・・・」
「・・・・そんな物質が・・・?!」
「ここまでは別によかったんだが、ある医学大学でフィルの死体が解剖の実験台として解剖されたとき、そのフィルから機密の原子が抽出されたんだ・・・途端に研究所での研究の結果、フィルの体にはその隔離原子が含まれており、その原子の量から、大都市3つを一度に壊滅させるほどの危険性があるんだってよ・・・」
「――――!嘘・・・」
衝撃の事実に赤城はショックを隠し切れなかった。
「はっ、とんだバカ話だと思ってたよ。でも、先月に、あるフィルが学生にリンチにあってな、怒りをぶちまけた瞬間そいつの体は一気に燃焼、そこから半径60km圏内の都市はすべて、同時に機能を失ったっつう事実があったのさ・・・
そのとき、俺はそばにいたさ・・・むなしかったよ」
赤城は無言で彼の話をきいていた。
「ま、そーゆーことでな、フィルはみんな軽蔑されるかもしれないし、それの調査に来てた。
モコは、ここの案内役だったんだ。自分がフィルでないか疑われる心配があったんだと・・・」
「赤城さん、変に誤解を招いちゃって、ごめん・・・」
モコが深々と頭を下げる。
「いいのよ、あたしこそ、変に疑っちゃって、ごめん」
赤城も頭を下げる。
「ま、そーゆーことで、近いうち隔離令でも出るかもな」
「え?」「え?」
二人が一斉にフロストを見つめる。
「あんな危ないもんを俺らは抱えてるんだ。公が黙っちゃいないだろ?」
「殴ったのって・・・」
「おそらく反フィル主義派だ」
「は・・・反フィル主義派・・・!?」
フロストの返答にモコがまた焦る。
「手短にいえばフィル撲滅隊だ」
「やっぱり危険だからかなあ・・・」
赤城が心情をかたったとき、フロストが何か支度をしながら返答。
「いや、ちと違うな」
「それってどういうこと?」
即座にモコが質問。すると、
「例のもんもってるやつらを利用して、世界を滅亡させるつもりさ」
淡々と並べられた言葉に、赤城が目をまるくしてつぶやく。
「め・・・滅亡・・・!?」
するとフロストが何かを取り出して返答。
「そう、ターゲットとしてフィル、それと赤城さんも然りな・・・」
「え?」
信じがたい返答にますます赤城は不安になる。
「なにこれ?」
モコが手渡された資料をみて尋ねる。
「赤城さんのカルテさ、中を見ればわかる」
「えーと・・・」
いわれるがままに二人はカルテを見る。すると
「あっっっっっっ・・・・」
何かを発見したかのごとく赤城が声を漏らす。
「下のほう、よく見て!」
「下?―――っていっても何が何だか・・・」
モコが半信半疑で見るとそこには”体内変質 ディープ237 含。”の文字が。
「!!?」
「もうわかっただろう?」
フロストが後ろを向いたまま聞くと、モコが厳かにいう。
「最近発掘された・・・ディープ237でしょ?」
すると病室のテレビから速報が。
『速報です。先ほど政府が、異人全面撲滅法を公布しました。内容は、フィルを全面的に排除し、フィルをかくまうなどの行為は、反逆罪として罰するとのこ―――』
「こっ・・・公布・・・?」
モコが驚愕の声。
「政府・・・・が・・・!?」
赤城も同じく驚愕
(おいおいまじかよ・・・)
フロストも半ば驚愕のさなか、彼の耳が大勢の足音をキャッチ。
「こっちに来るぞ!!!!」

「3階だ! 突入しろ!!」
病院の入り口では大勢の警官が突入していた。
大勢が駆け込む中、指揮を執る警官がぼそっとつぶやく。
「さわらぬ神にたたりなし―――か・・・」

「こっちはなにか生きる手段あるの?!」
モコが焦って聞くと、フロストが暗そうに返事。
「いや、それがな・・・さっき殴られたときに武器奪われた・・・」
「え”――――!!?」「え”――――!!?」
その刹那、廊下から叫び声が。
「警察だ!! 小山院長、異人全面撲滅法(法令)に基づき、国家反逆罪で処刑する!!」
警察の勧告に、体格のいい院長が廊下へでて立ちふさがる。
「私は命を救う立場としてすべての命を救うつもりです!! 処刑される筋合いはありません!!」
すかさず警察が警告。
「フィルやその支持者の命を救うが国家反逆罪だ! よってここに処刑する!」
「そんな理由で処刑など認めません!! お引き取りください!!」
「黙れ!」
ズダーン
一発の銃声とともに、院長は廊下に倒れ、動かなくなった。
「院長・・・」

発砲した警官がすぐに隔離病室に現れる。
「そこを動くな!!」
突然の出来事に、フロストと赤城はなにもできなかった。
ただ、モコはとっさに丸まってたため、見つかることはなかった。
トカレフTT-33を持った警官がフロストに近づき、彼の側で後ろ向きに立ち止まる。
「どうしても俺を・・・処刑するのか・・・?」
フロストの質問に警官は答える。
「当然だ、貴様らは生かすに値しない」
フロストがさらに質問。
「それは・・・法律か、それとも、お前自身か―――?」
するとすぐさま警官が振り向いて彼に銃口を向ける。
「両方だ」
といって引き金を引こうとした瞬間―――
バっ
いきなり赤城が警官にタックル。
「ぐはっ!!」
その光景にフロストは唖然。
そんな最中、赤城はもたれた警官の右腕をわしづかみにし、力いっぱいひっぱたいた。
「えいっ!!」
一撃で警官の右手からトカレフが宙を舞い、フロストの右足の前に落ちた。
「それ使って!!」
赤城の一言でフロストは我に返る。
「わ・・・わかった!!」
とっさにフロストは落ちていたトカレフをつかみ、構える。
彼の目の前では、赤城と警官が取っ組み合っていた。
「貴様・・・!! 共存主義(プロテスタント)か・・・!!」
「フィルは絶対殺させないから!!」
そんな時、フロストが声を張り上げる。
「どけ!!」
「はっ―――――!」
赤城が振り向いた瞬間、彼はもう引き金を引いていた。
ズダーン
彼の放った弾丸は赤城の前を通り、警官の脳天に命中。
警官は一瞬動いたかと思うと、その場に倒れた。
警官の死体を見つめる赤城とフロスト。
警官の額からは、血がしたたり落ちていた。

フロストが安どのため息をし、リロードを始めた時、ふと、赤城のほうをみた。
赤城は初めての人殺しで、思考停止状態であった。
( 初めて・・・人殺しをした・・・ )
フロストは立ち止まっている赤城に近寄り、左肩をぽんとたたく。
「気にすることはないよ、赤城さん」
「―――――!」
赤城は信じられない顔でフロストを見る。
フロストは少し穏やかな顔で、
「赤城さんがああしてくれなかったら、俺は今頃死んでいた・・・
命を助けてくれて、ありがと」とつぶやいた。
その空気に、赤城はただフロストを見つめるばかりであった。
「二人とも、大丈夫?」
モコが姿勢を正して問いかける。
大丈夫だ、問題ない
「―――――大丈夫・・・」
二人の無事を確認したモコはすこし嬉し顔。
「ふあああああああ―」
モコのすぐ後ろでレオンが目を覚ます。
「あ”−つかれた」
レオンのもとにモコが近づき、警告。
「レオン―・・・もう虐殺令出ちゃったよ・・・」
その一言でレオンは驚愕。
「マジ!!??」「マジ」
するとレオンがベッドから飛び出す。
「だったら長居は無用だ! 行くぞみんな!」
そういいつつあたりを見回すとそこには明らかに防護仕様がない下着だけの赤城がぽつん。
それに気づいたレオンは自分の迷彩服を脱ぐ。
「―――赤城さん、一応、これ着といて。それじゃすぐ死んじまうから」
「え・・・?」
するとレオンが答える。
「今から銃撃戦になる。この防護服をきてくれ」
「・・・・う、うん!」
赤城はレオンから彼の迷彩服を受け取り、着用する。
その間はみんな個々に準備。
レオンは、上半身黒の下着状態のまま、ポーチからトカレフを取り出す。
フロストは手に持ったトカレフの残弾確認、モコは上着の左内側の袖のフラッシュバンの確認。
全員準備が終わったところで、
「―――――よし!」
するとモコが待った。
「まって!」
モコがポケットから軍用ヘッドホンをだして、赤城に手渡す。
「銃声が絶えなくなるから、つけといて」
赤城は無言でそれを頭につける。
ヘッドホン×軍服上着の赤城を見てモコがちょっと惚れ顔。
今度こそ準備完了。
「よし!脱出するぞ!」
4人は病院からの脱出を試みる。